1996,12,22
あおい

おなかが、いたい。
おなかというより、しきゅう?ずんっと重石を乗せられたような、鈍い痛み。
トイレに入り、下着を下ろす。真っ赤に染まったナプキンを見た途端、何故か口のなかで唾液が溢れ、めまいがした。
死にたい、と思いながら素早くナプキンを取り替え、血に染まったトイレットペーパーを勢い良く流す。
あぁ、死にたい。死にたい死にたい死にたい。
3回思ったところで、自分が自殺する光景が始めてリアルに想像できた。股から血を垂れ流して伸びている汚くて冷たい死体。
いや、なにもあたしが死ななくてもいいじゃない。殺せば。
殺したい殺したい殺したい。世界中の人々を殺したい。一人きりで、死にたいと思いながら生きたい。生きたい生きたい生きたい。
ぐるぐると廻る脳みそがゲロを吐きそうで、鳥肌が立った。冷たい緑茶を一口飲む。綺麗な色のお茶は、体内に入るとたちまちドブ水のように汚くなる。
今月の蠍座の運勢は、どうだったかなぁ。
ぐしゃぐしゃの髪の毛を触ると、毛が数本指に絡み付いて抜けた。小さな蛇の子供に見えた。
リビングにあるクリスマスツリーはキラキラ光っていて、気持ち悪くなった。あたしが大男だったら、このツリーを引っこ抜いて振りまわしてめちゃめちゃにしてやるのになぁ。あ、また、でるでるでる。
どぁっと股に熱いものを感じ、再びトイレに駆け込んだ。ショーツを下ろすと、綺麗な鮮血でナプキンはぐっしょり濡れている。
なんびゃっかい、あたしはナプキンをとりかえるのだろう。
いつ、許されるのだろう。
軽い吐き気を抑えながら、新しいナプキンをつける。血に染まったトイレットペーパーを押し流す。
ソファに体を預けると、薄い涙の膜が眼球を覆った。蛍光灯がぼんやりと霞んで見える。ふと窓に目をやると、外は薄暗く霧がかかり、小雨が降っていた。
あたしは、あの小雨の一粒になりたい。地面に落ちて、砕け散って、こなごなに破壊されたい。左目から、涙がぽろりとこぼれるのを感じた。

小五の冬、あたしは生理になった。


散文(批評随筆小説等) 1996,12,22 Copyright あおい 2005-02-03 01:10:34
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