消えた
北井戸 あや子

つきそこねた手鞠を追う様に
それは穏やかな足取りで
少女は薄闇の向こうへと
消えた
金木犀色の夕暮れは鬼が通るから
はやく帰っておいでなさいと
置き去りにした過去
思い出せば影が伸びてきて
それは当たり前に喉笛へと爪をたてるけど
ガタガタと身体の震えだけ残して
また
消えた
逢魔が時、はぐれたふりで逃げ出した
待たせてごめんね 怖かったよね
でももう大丈夫
こうやって混ざったら、ほら
魔物しか居ないから
二人はずっと迷子でいられるよ

町内会の看板には
増えて行く捜索願


自由詩 消えた Copyright 北井戸 あや子 2014-12-23 22:15:15
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