三日月の国
nonya


漠然とした不安に
暑苦しいくらい重ね着させて
頼りない平気に
大袈裟な添え木をして
大丈夫という
お題目を唱えながら
見て見ぬふりの
巡礼の列は果てしなく続く

弓なりに反りかえった
三日月の国に生まれた僕等は
諦め方と紛らわし方を
ずいぶん長い間学んできた

空気を速読するプロフェッショナル
フリック入力のスペシャリスト
匿名の陰で照準を合わせるスナイパー
自分だけをこよなく愛するモンスター

諦め顔で笑って誤魔化しても
じわじわと落伍者は追い詰められる
極めて品の良い村八分
無視という名の終身刑

今日も正義を振りかざそうとした親父が
街中で嘲笑の集中砲火を浴びていた
気がつけば僕も塩辛くない涙を流しながら
引き金を引いていた

弓なりに反りかえった
三日月の国の一員として




自由詩 三日月の国 Copyright nonya 2014-12-23 17:51:05
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