アザラシ君のオモテナシ ー旭山動物園ー
イナエ

    ゴマフアザラシなど
    北の海ではひょこひょこと
    モグラ叩きのように頭を出し
    珍しくもないけれど…

その目は カメラを見つめていた
水面から顔を出し 身動きせずに眺めていた

シャッターに指を掛け
ゆっくりと力を加える

その瞬間を見逃さずアザラシは
鼻の穴を広げて息を吸い込み
ポーズ

シャッターが落ちろと同時に
身を反転 
池の底へ潜って行った

池の底から地階の水槽へ
延びるガラスのパイプ
に添った螺旋階段に立ち止まって眺める人々に
くるくる回って背を見せ 腹を見せ
地階のガラス張り水槽に誘う

水槽の周りには
人間の子ども達が待っていて

アザラシはガラスの面に添って
ひとりひとりの子どもと目を合わせ
ひれを振って泳ぐ
ひとりひとりに挨拶するように
こどもの目が輝き 歓声があがる

  喜々として泳ぐアザラシは舞台の芸人
  遠く離れた私の中で
  今も鰭を振って泳いでいる


自由詩 アザラシ君のオモテナシ ー旭山動物園ー Copyright イナエ 2014-12-22 21:57:17
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