わたしがいない
ユッカ
はじめて楽器をつくったひとは
どんなきもちがしただろうかと思うの
ピアノを聴いてもバイオリンを聴いても
うつくしいほどくやしいから
月を歩いてみたかったし
神話だってつくりたかった
わたしがね
国道を自転車で走っても
粘土でコップをつくっても
わたしがいない
そこにいることができなくて透きとおる
朝日を見ていた
いつも
水色の時間に
はやくおばあちゃんになりたいのに
あたらしい物語になろうとしている
わたしはタイムマシンがあっても
きっとどこにも行かないで
明日も明治のチョコを食べ
すこし湿った息を吐く
それをつじつまがあわないって
言わないでよね
わかるでしょ