おしくなればおしいものよ
竜門勇気
壁をものともせず
しゃべり交わすひびの塹壕の中で
牢屋に閉じて
羽のありかも忘れれば
静か静かと誰の言葉もうつろう影のさんざめき
見つけた見つけたと
小人の声こそやけにでかい
壁を壁と思わねば
何処にも閉じ込められぬと
見つけた見つけた
偉大なものだ 大変なことだと
ここに会えばあるのだと
繰り返す終点の延長は
優しさだったのかもしれない
終点などないと
悟られぬように置く
記号のような
死ぬ気で行えば
次は死ぬことも手段
死んでもいいよと思うなら
いつかは死なねばと思うだろう
いつかは死ぬさと
悟った振り
早いか遅いかよと
悟った振り
何をなすかと
知った振り
どう生きたかと
嘘もつかなきゃ死んでらんねえな
惜しくなればようやっと
やっと惜しいものよ
いつかが早く
不平等も悟ったふりか
それは気持ちのいいものなのかと思う
明日も街は息を吹き返すだろう
誰の吐息も溶かしたままで
壁に囲まれた暮らし
いけない場所などなく
ただひどく傷つくだろう想像と現実が
喜び隠せず笑う顔
だれでもなく
わたしでもなく
そうやって作られてしまった顔が
喜び隠せず笑う顔
苦しさから逃げ惑う敏感なものが
内側で心臓を動かしている
この不愉快からどうやって抜ける
この自分からどうやって
死を燃やせば
次は死ぬしかなくなる
命を言い訳にすれば
次には何も残らない
なにももう
わたしにはない
命は
燃えましたか
死ぬ気で
頑張りました
でも
だめだったんですね
そして素知らぬ顔で
ひびは息を吹き返す
世界の片隅は此処に確かにある
世界の路地裏は確かにある
世界に隠れた場所は確かにある
このままで何もない未来を迎える
裏口から唾を吐きながら吹き抜ける未来を