定形の愛と非定型の型枠
北井戸 あや子

形を無くそう
手に手を取ったなら
千切ってしまえ
ところで
今日のおまえはやけに笑うね
窓越しに光を含んで
飴色にぼやけだすんだ
そこにいるのか
不安になって
唇をなぞれば
相変わらずの冷たい熱で
おまえはゆらりと笑ってみせる
蝋燭の火が消える寸前の瞬きだ
おまえに何度壊されたのだろう
ああ形を無くしたい
沈む事もせず、飛び降りる事もなく
ふたりで形を無くしたいんだ
最後のひとつは死ぬまで迷い子
時間が曖昧な感情を切り刻む
おまえと形を無くしたい
だけど、この世界のどこに
形が無いと言えるものがあるんだ
解らないんだ
解らないんだ
ふたりでただ無くしたいだけなのに
夜に鳴る風は緑色の形して
ひゅるひゅる音たてて
ふたりの皮膚を奪っていくけど
最後の一枚だけ、いつも
形を残していく
もし形を無くしたら
飲み込んで欲しい
そうしたら
おまえの中の中毒を食べてあげるよ
でも、そうじゃない
形を無くしたい
誰でもなくふたりで
無表情のまま
無くしたいものは
形……


自由詩 定形の愛と非定型の型枠 Copyright 北井戸 あや子 2014-12-19 00:21:37
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