すらり ふわり
瑞海


月明るい夜に
世界から脱走してみる
夜の追い風が吹いて
海までひとっ飛びする

懐かしいこと忘れないように

海の底に眠るあなたは
いつ起きるのでしょうか
さっぱりわからなくて
もう傍に100年います
海月になってしまいそうです

ずうっと海にいると
空気のこと思い出してしまって
あなたのうなじの香りが
肺を満たしたこと
あれほどの幸せもう無いと思う

雪に埋もれる桜
消えかかりそうな紅
あなたの死化粧を思い出す

大切なものほど
脆く 柔く 優しく
僕の腕からすらりと
零れ落ちていく

白いあなたが
微笑んで 手を引いて
野原を僕と歩く
ワンピースの裾がふわりと
風に揺れていた


“全部全部夢だったんだ
君は私の傍にはいないし
私も君の傍で眠らないんだ”

そうやってまたあなたは
泣きながら言う

“人の夢は儚い”

少し笑った


自由詩 すらり ふわり Copyright 瑞海 2014-12-18 00:18:35
notebook Home 戻る