ぽけもん
やまうちあつし

一人暮らしの私の家に
奇妙な動物が紛れ込んできた
害はなさそうなので
飼うことにした
白くて丸くて
わりと愛嬌がある
たてがみは赤く
瞳はつぶら
私は日中この動物を
なでて
だきあげて
ほおよせて
わらう
とても気に入ったので
近所の人を呼び寄せて
得意げに披露する
隣人たちは珍しがって
動物をこねくりまわす
抓ったり
叩いたり
落としたり
弾いたり
寄ってたかって笑う
私もそれに合わせて笑う
ほとんどすべての動物が
ここでは笑っている
   
    ☆

夜半過ぎ
静まり返った私の庭に
私は立っている
がくりと膝をつくと
ぽとり、ぽとり、と地球の上に
目や鼻や口やが落ちる
昼間の喧騒で
ぼろぼろになった白い動物が
よろよろ小屋から這い出して
私の肩をそっと抱く
月の光に照らされた間だけ
そっと抱いている
明日の昼には
別の隣人を呼んでいる


自由詩 ぽけもん Copyright やまうちあつし 2014-12-16 07:20:56
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