月と会話した少女
クロヱ

月を指差して とても綺麗な言葉を吐いた少女がいた
それはそれは綺麗なもので
真黒の風呂敷の中心に浮かぶ 銀にも負けぬ輝きだ

あたしは とてもとても聞き取ることに難儀し
とうには諦めてしまった

少女が言うには

「火星はね 
 火のように轟々と ひと時も休むことなく燃えている
 それだから 火の星と言うのよ」

例えるなら このような話だと思う

素敵だね
それならばと 問うてみた

「金星ね
 あの星は石が全て金塊で出来ていて いつでも眩く輝いている
 とてもきらきらした星なのよ」

このようなことを答えたのだと思う
素敵だ

あたしはかの言葉を忘れてしまっていて 何一つ聞き取れなかったが
とても良い話をしてくれたと思う

少女は真白に微笑んで また月を指差した
その指先が柔らかな銀に触れたとき そこからすうっと少女は溶けていった

その子が遠い昔から とても見覚えのある少女だったと気付いたのは
かなり遠いところに来てからである

いつからだろう
少女の言葉を無くしてしまったのは

あんなにも
白く 純粋な綺麗なもの


自由詩 月と会話した少女 Copyright クロヱ 2014-12-15 21:40:41
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