少年よ我に帰れ/即興ゴルコンダ(仮)投稿
こうだたけみ
◎帰レナイ
かつてまだ少年法なんてのに守られてたとき毎日帰りたいってつぶやいてた家族の待つ家までの道あるきながら帰りたい帰りたいって何度も何度もあれはいったいどこに帰りたかったのかそのときだっていつもどこへなのか考えてはいたんだけれどどこにもたどりつけないまま今もわたしどこいっちゃったの? おかーさあああん(泣きながら襖を開ける)みんなここにいたの?
◎我
雨の日には学校の裏に忍び込んで紫色の花が咲くはずの低い植え木の緑の葉っぱを裏返してはてんとう虫の幼虫の黒と橙の縞模様のゲジゲジを探してたのはわたし一人だったし雨の日にはお気に入りの公園の湿った砂利道を踏みしめて紫陽花の大きな葉っぱを裏返してはかたつむりの角を探してたのはわたし一人だったし雨の日にはねずみ色の空を見上げてあれは酸性雨だなんて指差してたのはわたし一人じゃなかったな水色の傘は
◎割レナイ
半分の神様ともう半分の神様がくっついているから11という数字は割りきれないんだって先生が言っていたような気がするから本当は二人で一人なんだったらわたしのカタワレはどこにいるのさ神様なんて信じないからかめさまーかめさまーかめさまーってさっきから耳元で呼んでいるんだよ聞こえているのかい甲羅は簡単には我ナイ
◎少
少という字はずっと見てるとニヒルに笑う人の顔みたいだよね、ね
◎帰レ帰レ
わたしのなかの少年性、
◎少年ヨ我ニ帰レ
少年が我に返ると大人になるなんて嘘っぱちだけど少年が我に返ると少女になるのはあり得るかもしれないというのは少年が男子だけでなく女子をも含む言葉だからでそうすると我に返れば大人になるというのもあながち嘘ではなくなるかもしれないし我に孵るのならばますます子供から大人になりそうに思えてくるけれど大人になるなんて想像がつかなかったひとっ飛びにおばあさんになるんだと思ってたどこに行ったらいいのかわからなくなっただから我に帰れってのはそういうこと
言葉の世界に生きられたらいいのにって死んでしまいたい系の少年たちへ捧ぐ