そこにある町
北井戸 あや子

紫がかった白い花を幾つか摘んで

古い白い穴のあいた小舟に乗る

湖へゆっくりと漕ぎ出しながら

細切れにした思い出は通った道に浮かべてある

穴のあいたこの舟はちょうど湖の真ん中で沈む

誰もいない町を出て

会いに行く

誰もが沈んでいった場所へ

みんなが底にいる湖に

僅かばかりの花を抱いて


自由詩 そこにある町 Copyright 北井戸 あや子 2014-12-09 15:24:25
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