とりかえっこ
そらの珊瑚

子供のころ
とりかえっこが大好きだった
友達の靴はわたしには窮屈だったし
弟の枕は乳臭かったけれど
自分以外の人を感じる楽しいゲームだった
とりかえっこのあとには
必ずとりかえっこが返されて
輪になって
終わるルールだった

たとえば眼球を交換したって
あなたとわたしが
受け取る世界は
同じ景色を見ていても違う
そこに
おそらく理由なんかないし
あるとすれば
自分由来のまばたき、だとかの類

寒いねとふるえる人もいる
案外あたたかいねと笑う人もいる
季節を取り替えてみただけで

十三月はどこへ行くのだろう
十二月のあとに
来るはずだったのに
毎年誰かに
一月と取り替えられている

ダウンジャケットを着込んだわたしは
ぬくぬくと歩いて
たまに恋を孵化させる
生きたまま羽をむしられた鳥の気持ちは
とりかえっこの輪の外に
左手で押しやって



自由詩 とりかえっこ Copyright そらの珊瑚 2014-12-08 11:55:30
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