はじめてのでーと
ドクダミ五十号

横浜のお堀は淀んでいた。
西口からそれに掛かる橋の先。
五番街と呼ばれる街区があり、私と彼女は
左に見える日活ロマンポルノ上映館を知らないふりを。
純喫茶で文字通りお茶を濁すはずだったが、赤いチョッキに
蝶ネクタイの呼び込みに案内されて、全然違う所に。
薄暗い廊下。革張りのソファー。あちらこちらから嬌声。
気まずいと思ったのは私だけ。彼女は興味津々。
もちろん私はニスが厚く塗られたテーブルの上の
呼び鈴を鳴らし、ブレンドコーヒーを二つ注文し
潤んだ瞳で誘う彼女に指一つ這わせず
唇を奪う事もせず

同伴喫茶
昭和
面白い

今でもあるかなあ


自由詩 はじめてのでーと Copyright ドクダミ五十号 2014-12-08 04:27:08
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