<はるか>
nonya


凍てついた夜道で
640年前のベテルギウスの光を見上げながら
今日は星が綺麗だね
って僕のポケットに手を突っ込んでくる

見えないサソリから
ただ逃げ回ってばかりいるとても臆病な僕を
捕まえてくれるのは
君しかいないって思い込ませて欲しい

凍てついた暗闇の
一番端っこから解き放たれたまっさらな光は
無意識の荒野を抜けて
未だに僕を歩ませてくれている

時々僕の隙間から
洩れてしまうその光を皮肉な薄ら笑いだと
観客は言うけれど
詩のつもりなんだよ一応ね

君の手の冷たさが
自分の中の熱を思い出させるから
少し恥ずかしい

僕だって熱はあるんだよ
ただ語ると嘘っぱちになっちゃうからね

ふたりで黙りこくったまま
<はるか>を見上げていちゃ駄目なのかな
ふたつ白い息を並べて
<はるか>の欠片で創られた体を寄せ合って

寒いね
ってポツンとつぶやく君の瞳の中に
<はるか>を見つけてしまった僕は

もうとっくに
捕まっちゃっているのかもしれない




自由詩 <はるか> Copyright nonya 2014-12-06 10:48:13
notebook Home