そのとき
ドクダミ五十号

朝に炊いた玄米メシ
冷たくなった握り飯を
私は食らっていた

父親だった男が死んだと
疎遠過ぎる妹からの電話

皮肉なものだ
あまりに薄い縁を
思い知らされた

玄米は
よく噛み締めなければ
消化しえない

私が孤独であるように
死んだ男が孤独だったように
肯定しつつ否定した
人の命とその限りと
行き着く先と

むえんぼとけとして
納骨された
その残に
花を添えてやろうと思う
線香も焚いてやろう

それでズシンと重い
心の底に留まっている
悲しみでも
哀れみでも
憎しみでも
恨みでもない
それが消えるわけではないと
両切りのタバコが
唇を焼く間際に
もみ消しながら思ったさ

儚いとはよく言ったものだ
人の夢
認知症の男は
夢を
最後の夢を
認知できただろうか

それだけが気がかりだ


自由詩 そのとき Copyright ドクダミ五十号 2014-12-05 04:05:51
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