夜光樹、成長痛
吐水とり
泣きはらした顔を凍らせたいのに
きれいな星がぼくのそばに
どんどん墜落する夜で
つちぼこりが目に染みる
感受性を死守したいだけ
ぼくの左胸に生える樹も
切り口からどろどろと泣いている
月のひかりに優しく串刺されながら
溢れる樹液をよるに吐いた
夜光虫があざ笑いながら街灯に群がる
この子の水は甘くない
関節が軋みをあげて背いをのばすから
いつか胸のなかの樹よりも
ぼくの心臓だって
ずっとおおきくなるだろう
この樹の下にうずくまって
延々泣く夜はもう来ない
星は唸りながら墜落していく
赤くなった目をこすって
もう一度吐き出した
糸をひいた
ただの唾