命に音を刺す
かの

うーん、と
背伸びをした
うなった、のも
少しだけあった

ふわふわしたものは
予想外に予想以上に転がっているから
わたしは口を大きくあけて
酸素がほしくて

どろどろしたものが
意外と地を覆っていたから
こどもは外を歩けなくて
お母さんのお腹へ帰っていった

そこに降り刺さる

の音
血を這って
昇ってくる
感覚

パソコンの中でさえ
やけに小さく見えるのは
わたしには
わたししか
見えなかったから
やっぱりどうやっても
そこで、うーんと、うなるわけさ

どこもかしこも
思ったよりはキラキラしていて
それが肌に合わなくて
赤くなったりして
腫れたりして
そうやって
古くなって

そして
やっぱりわたしにはわたししか見えなくて
だからわたしは懸命にわたしで
やっぱりあの子のことはわからなくて
だからあの子は懸命にあの子で
ガムを
何度も
噛んでは
出して
噛んでは
出して
聞こえる音がわたしを刺す


自由詩 命に音を刺す Copyright かの 2014-12-01 16:02:42
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