私を閉じ込めないで
夏美かをる
どうか、私を弄んで下さい
その熱く燃える掌で
私の輪郭を全て辿って
白く滑らかな肌に頬を寄せて
息を吹き掛けて
どうぞ、私の中に入ってきて
わき腹を鷲づかみにして
何度も何度も私を翻して
体中の臭いを嗅いで下さい
轟き続けるこの鼓動を
あなたの全霊で受け止めて下さい
どうか―
私の知らない女からのテキストや
さもしく雑多な画像たちと一緒に
私をギガバイトの闇に閉じ込めないで
お願いだから、
まるで遊女を買うように
気が向いた時だけ呼び出して
冷たく無機質な液晶の上に
私を横たわせないで下さい
たったひとつのこの体を
惜しみなく全てあなたに捧げ
やがてあなたの腕の中で
ゆっくり朽ちていくために
神泉のほとりに佇む
一本の大樹から生まれてきた
一冊の小さな詩集
それが私なのですから