外へ 夜へ
木立 悟







扉をあけると影が廻る
壁を舐める火が径を揺らす
空が巡り 落ちてゆく場所
行方と行方が重なる場所


冬の帽子
両腕をひろげ
花を呼んだ
名前ではなく
かたちではなく
ただそのものを


屋根の裏側に巣喰う径から
金と緑の物語
かけらとなって降りそそぎ
壊れた灯りをのぞきこむ


月との間にしるしがあり
指がゆうるり拾うとき
瞳には声 またたいて
灰と無の背にはじまってゆく


八に組するか五に組するか
蛾の羽の手を宙に溶かし
ただ透を見る 風を見る
片目を奪う風を見る


焦げる音
したたりおちる音
手のひらの陽に震える音
花をなぞり
花を忘れる


ひとつを割っても
ひとつはつづく
水のなかの弦をつまびく
水のなかの指のように
流れを飛ぶ紋を呑み
うずくまる骨を抱く


木の象が緑の水を吸い上げる
門前の足跡が渇き うごめく
蒼わたる蒼
壊れかけた灯りが 花のように
一度だけ 一度だけ点いてゆく
























自由詩 外へ 夜へ Copyright 木立 悟 2014-11-26 23:07:19
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