ぷにゅーま
ただのみきや

やわらかい殻にいっぱいの息

わたしは風船だな

見える触れる存在を

地上に繋ぎとめているのは

幼子の手のひらのような柔らかい絆だけ

父の肩車でぽってり眠ると

結んだ力がほどけて

音もなく上って往くように

そう 霊は大気より軽い 軽い

誰かが見上げて泣いている

ゆっくりと遠ざかる大地に

文字がうごいているように見えた

いかようにも変わりゆく詩のように

人々はこらからも暮らして往くのだろう

限りない大気の中で

未だひとつの己を保つ

なんとも不思議なことだ

やがて 突然

あるいはゆっくり

わたしも大気に溶けて

ちいさく萎れた殻を

わたしという有り様を

どこかでそっと失くすのだろう

死とはちょっと違う気がする

かたちに閉じ込められるのは苦手だから

息は体温や心をいつも

いつも大気の中へ

赤子を生むようにことばとして届け

あわくとけるものだから

千も万もの有り様も

ひとつの風

ひとつの霊

ひとつのいのちの深呼吸



         《πνευμα:2014年11月22日》






自由詩 ぷにゅーま Copyright ただのみきや 2014-11-26 20:20:09
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