プレゼント
Lucy

私の知らないところで
私の吐いた言葉がトゲを持ち
誰かの掌を刺す

私が投げかけた一言が
誰かの心の壁に
釘で打ちつけられたレリーフのように
いつまでも掛っている
私がそれを忘れた後も

それは古びた銅版画
繰り返す季節の記憶を追い抜きながら
時の隙間を疾走する
壁を腐食させ
ささくれた皮膚に浸潤して
艶やかだったあなたの頬を歪ませる
目尻を吊り上げさせ
涙袋に深い皺を刻みつけ
宿根草のように
枯れたのちも
あなたの耳奥の三半規管に根を拡げ
網膜を白く曇らせる

そうしていよいよ
年月に病んだあなたが
私の前に現れ
嘗て友情と呼んでいた
古びた莢から
干からびた空豆を取り出すように
黒く固まった憎しみの礫を
私に差し出す

それはくしゃくしゃに折りたたまれた
薄い金属の板
広げようとする私の指に
刺さり切りつける
血に汚れながら開かれたそれは
見覚えのある冬景色
べったりと裏に悪意の付着した

私は気付く
それを贈ったのは私だと
故意に忘れた
知らず知らずではなく
なにげなくでもない
妬みで裏打ちした言葉
己を偽るための甘味は舌を痺れさせ
耳触りのよい言い訳で包装し
善意のリボンまでかけて
あの日やすやすと手渡したのだ







自由詩 プレゼント Copyright Lucy 2014-11-26 09:43:19
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