小さな猫のおはなし
藤鈴呼
誰も足を踏み入れたことのない
小さな島の一角で
白い猫が まどろんでいる
小屋から出て来た女性が
美しいドレスを身にまとっていたので
少し ビビる
猫は ビビることなんて 知らないと
思い込んでいる 少女は
やわらかな胸で
ぎゅっと 猫を 抱きしめる
猫は 化けられぬ
キツネにも なれぬ
たぬきなら 知らぬ
夢現
夢物語
どこからが 夢狩りなのか
分からなくなって
語り部の おばあさんに
助けを 求めようと するけれども
おばあさんは 眠っちゃった
ゆっくりと
しかし 確実に
眠っちゃったの
だからね
物語の 続きが
気になって 仕方ないのに
聞けないのです
そして 仕方の無い 気持ちばかりが
この先 えいえんに
続いて しまいそうで
そっと 目を閉じた
チクチクチク
これが ミシンだったならば
こんなに 痛まぬものを
違うの
痛む記憶も 魅せないで
一気に ガッ と
縫い上げちゃうの
だからね
ギャッ と 叫ぶ時間も
残されては いないんです
ジグザグでも
凸凹でも
あの 轍のように
タイヤが ゆっくりと
埋め込まれたならば
次のステージへ
進めそうな
気がしているんです
いえ 進め、 と
背中を 押してくれるような
そんな気が するんですよ