キノコは重力を知っている
Seia
という一文が一字一句正確に
記載されていたかどうかは
覚えていないんですけど
とにかくなんだかそういう意味の言葉を
どこかのインターネットのページであるいは
どこかの図書館の片隅の何ページかで
みたような気がします
みたような
みたはずです
いえ
みたのです
みたといっておきます
みたのです
で
朽ちて横たわった大木の隙間から
地面と平行にはえ出したキノコが
次第に天へ
登っていくのは
鬱蒼としているこの森をみてもわかるとおり
太陽をめざしていることだけでは
説明がつかないのでしょう
重なった葉と葉の間から
漏れだすひかりの階段へ
一歩踏み出すためのクッションとなって
すべては
地表から逃れるため
重力のことを
知らなければならなかったのです
たぶん
三億年ほど経てば
菌類は自分の意志を持ち
森を出ることでしょう
野原に降り立ち
二億年が過ぎた頃
ここまで考えておいて
たった一行
最初の一行が
ただの見間違いだったら
なんてことを
今さら思ったりしてしまうのですが
浮かんだほわんほわんを強引にしまいこんで
腐葉土の中へしまいこんで
カエデを敷き詰めて寝転ぶのです
それから
意外と暖かいな
と
つぶやくのです
重力を感じながら
キノコがはえてくるまえに