キノコは重力を知っている
Seia

という一文が一字一句正確に
記載されていたかどうかは
覚えていないんですけど
とにかくなんだかそういう意味の言葉を
どこかのインターネットのページであるいは
どこかの図書館の片隅の何ページかで
みたような気がします
みたような
みたはずです
いえ
みたのです
みたといっておきます
みたのです

朽ちて横たわった大木の隙間から
地面と平行にはえ出したキノコが
次第に天へ
登っていくのは
鬱蒼としているこの森をみてもわかるとおり
太陽をめざしていることだけでは
説明がつかないのでしょう
重なった葉と葉の間から
漏れだすひかりの階段へ
一歩踏み出すためのクッションとなって
すべては
地表から逃れるため
重力のことを
知らなければならなかったのです
たぶん
三億年ほど経てば
菌類は自分の意志を持ち
森を出ることでしょう
野原に降り立ち
二億年が過ぎた頃
ここまで考えておいて
たった一行
最初の一行が
ただの見間違いだったら
なんてことを
今さら思ったりしてしまうのですが
浮かんだほわんほわんを強引にしまいこんで
腐葉土の中へしまいこんで
カエデを敷き詰めて寝転ぶのです
それから
意外と暖かいな

つぶやくのです
重力を感じながら
キノコがはえてくるまえに


自由詩 キノコは重力を知っている Copyright Seia 2014-11-24 22:04:42
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