入り口
Lucy

グリルの中の
魚のように
何度も
何度も
裏返され
生焼けのまま 
今夜も
薄明かりの下を
彷徨う
行けど
行けど
見つからない
百目の案山子が
跳んで追いついてくる
ぬかるみの中から
想念の細い手が伸びてきて
足首を掴まれる
諦めて
虚無の流砂に身を任せても
幼い子どもの泣き顔が
画面いっぱいのアップになると
いたたまれない過誤の記憶に
呼びとめられる
振り返るとすぐ目の前で
扉は冷たい石の壁
蜃気楼のオアシスが
ほんの一瞬遠くをよぎるが
歩み出す度に
痛む節々 むず痒い皮膚
耳障りな雨音
疼く古傷
いまいましい肉体の牢獄に
引き戻されてしまう魂
どこかに
あるはずなんだ
ホグワ―ツ行きの列車が待つ
9と4分の3番線へ繋がる通路
そんな眠りの入り口が





自由詩 入り口 Copyright Lucy 2014-11-19 19:01:07
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