懐中?海藻。
百均
[懐中?海藻。]
クラゲという言葉が好きだ。愛している。だが、頭の中に浮かぶ
くらげの姿は大体グロテスクだ。他でもない、グロテスクだ。も
う一度言おう、グロテスクだ。可愛くはない。だが、クラゲをみ
ていると、とても可愛いものをみているような気分に侵される、
そう侵食されているのである。硬い話はもうやめだ、次に鯨の話
をしよう。ある日綿毛が舞い降りてきた日のことだ。ケセランパ
サランを知っているかい。では信じているかい。僕はアメリカ大
陸を踏んづけたことはないが、マックで食べた、おいしいお肉の
存在を愛し、狂牛病に震えた時もあったね。今はそうじゃないだ
ろうが。鯨の話をしよう。あれは初めて飛行機に乗った夢のこと
だ。夢の続きは僕以外の人たちにとってはつまらないことみたい
だね。星空が空に吊るされている話は残酷かい?それとも、鼻で
笑ってしまうくらい無様に見えるかい?感じるかい?古代エジプ
ト人達が建物の壁面に描いた絵の目線が、今の我々からしておか
しく感じるのは、当時の人たちと我々の物の見方が違うからで、
それはつまりピカソが書いた絵が幼稚園児の落書きだ!と断定す
ることに等しいのか?という話を電車で、二人きりでしていると
息が詰まるね。何か頼もうか、すいませーん!あれ?誰もいない
な、なんだか気味悪いから僕が隣の車両までいって車掌さんとか、
他に乗ってる人たち様子を見てこよう。長旅で疲れた腰を上げ、
右手をつり革にかけようとした。しかし、つり革は天井であり、
ここは可愛いセスナ機の狭い後部座席なのだった。
飛行機が旋回するたびに地面が逆転すると。鳥たちは地面を這い
つくばって、地を這った、這いました、そして立った、彼らは僕
達と同じように。一瞬空が凪いだ。口が空いた。クラゲが雲に落
ちた。鯨が鳴いた。溢れる塩が雲となり氷の雨を降らせた。プロ
ペラに当たる、氷晶と、雷、そして僕の凍った爪先と、犬歯と、
腰に刺していた刃で、窓を切り裂き、フロントガラスを蹴破って、
庭から落ちた猫のように身体を右方向で回転させながら空へ、空
へ、西に雲が傾き、東から空が崩壊した、続きは!続きは!と原
稿の仕上がりは!と急かす観客の待機とプレッシャーを背負い、
作家は空から崩れ落ちた。足が!足が!手が!腕が!凍った刃を
へし折るように、クラゲが、シャチが!鯨が!マンモスが!光が! 光が! 光が!
光が!