学生
萩
冬の鋭い空気に皮膚が擦れる
首の下をすり抜けていく冷たさ
固くなる指の関節
N市に雪は積もらない
部屋の奥の奥まで今朝は
白い日差しがのびていた
たやすく鎖せる六畳間では
ひとりで生きていける気がしていた
おとといも昨日も今日も
同じことをして生きていられた
しゃべることなく
繋ぐことなく
春はいらなかった
* * *
軽い嘔吐感
雑踏に痺れながら
だれかの俤を見る
繰り返し繰り返し
慾が消えた身体を抱えて
瞼を閉じる
たったひとつの希み
お願いだ
お願いだよ
春はいらない
(141115)