オセロ
ただのみきや

ごシュウギ目当ての

全国オセロ大会が始まる

以前は俄然合戦

セイトウ的陣取りゲームの囲碁だったが

近頃では多くのイシが

「我らシロにもクロにも決めかねまする」

投じるイシの権利を捨てて道端のイシころに

はたまたシロでもクロでも気分次第

表裏一体シロクロイシに変わったものだから

合戦の佇まいは同じでも

戦略的には変化して

まず相手の尻尾を捕まえて

次に頭を押さえつける(蛇とは逆だ)

そして悪口と耳障りのよい言葉を交互に

流行りの呪文のように宣と

イシは揃って裏返る

シロからクロへクロからシロへ

右向け右 左向け左

シロクロイシの悲しい性

合戦の度の反動も否めない

まるいイシと四角四面の線引きでは

最初から隙間だらけの約束だって解っていたはずなのに

だが傍観者のイシころにすでに口はない

そもそも個々のイシの言葉は届くのか

囲碁のイシもオセロのイシも手に取る者には

つるりと冷たい 無個性なコマ

季節外れのウグイスが鳴いて

馬鹿でかい声で「お願い」されて

合戦の後の甘い汁は

数多のイシの預かり知らぬところ




                  《オセロ:2014年11月15日》








自由詩 オセロ Copyright ただのみきや 2014-11-15 12:54:47
notebook Home 戻る