水路に盛り上がる鯉を見た翌朝
イナエ
ブラックボディの
ノートパソコンを開け
キーボードに伸ばす手
を追い越し
パネルに伸びた指
夜明け前の画面に触れる指先
から泡立ち溢れる渦
胸の傷口が割れて
大輪の洋蘭
隠微なしべの唇に
浮かんだ笑いから
舌が伸びて舐める
わたしの眼球
下りる紗膜
崩れた輪郭
色彩の渦
独楽のように廻る画面
染色され うねる生き物
の吹き上げる炎は脳内を染め
萌え立つ欲望は肢体を舐める
ありふれた水路の鯉の群れ
崩れた口を半ば開け
覗く女陰から吐き出された声
がわたしの脳に直接飛び込む
「いつか
おまえを喰ってやる」