水路に盛り上がる鯉を見た翌朝
イナエ

ブラックボディの
ノートパソコンを開け
キーボードに伸ばす手
を追い越し
パネルに伸びた指

夜明け前の画面に触れる指先
から泡立ち溢れる渦 
胸の傷口が割れて
大輪の洋蘭

隠微なしべの唇に
浮かんだ笑いから
舌が伸びて舐める
わたしの眼球
下りる紗膜

崩れた輪郭
色彩の渦
独楽のように廻る画面

染色され うねる生き物
の吹き上げる炎は脳内を染め
萌え立つ欲望は肢体を舐める

ありふれた水路の鯉の群れ
崩れた口を半ば開け
覗く女陰から吐き出された声
がわたしの脳に直接飛び込む
「いつか
 おまえを喰ってやる」


自由詩 水路に盛り上がる鯉を見た翌朝 Copyright イナエ 2014-11-15 10:16:07
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