【刀】かただかな鼻
るるりら



世の中の 大抵の不幸は知らないことから 始まる。
誰かの携帯の音かと思えたが違うようだ。着信は無い
すずむしの声だったようだ

山深くにある この集落の中心には 無数のシデの木が群生している
天狗の里と呼ばれており、古来からシデの上を塒としてくらしている
シデの木も ほかの地域の シデとは違う。
幹は曲がりくねっており 
飛行からかえってきた天狗たちが座る場所に事欠かないし、
衣類を干す場所にも苦労しない。
霧氷のついた服が、天日に干されて 輝いている。 
「やあ」
巻き上げられた紅葉の中から 奴が声をかけてきた
「おまえの鳥瞰図をみせておくれよ」というので グーグル地図を出してやった
「こんなものばかりを 頼りにしてるから 山の思いが 
おまえたちには解らないのだよ」

 もう すずむしなんて居ない」
あの音は 魔物の鍛冶屋が武器を鍛えているからだと云う。
よく効く鼻を ひくひくさせて「おまえは、匂わないのか?」
遠く錦絵のような山の稜線を見やると
大小さまざまな色彩の葉が 渦をつくりながらゆっくりと下りている の を
突然 それらが一斉に巻き上がった
風は
天狗が 空に飛び立ったからだった。


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写真説明
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天狗シデとよばれている樹木です。
シデの木の突然変異ですが、曲がりくねっているのは突然変異と言われています。
突然変異種の自生でありながら 群生しています。突然変異種の群生は珍しく、
広島の大朝という場所で  国の天然記念物となっています。
たまたま 当地を 訪問いたしました。


携帯写真+詩 【刀】かただかな鼻 Copyright るるりら 2014-11-13 12:40:01
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