現代詩カフェ(読み放題)オープン!
左屋百色
男は詩を書いていた。
たくさんの詩を読み
感動したり影響を受けたり
時には幻滅したりしながらも
毎日のように詩を書いていた。
そして、
男は自分の作品を一冊にまとめ
ついに詩集を出版した。
題名は「草原の奏でる闇」
とてもベタな題名であった。
そして、
正直あまり売れなかった。
そこで男は自宅の一室を
リフォームしてカフェを開いた。
店名は現代詩カフェ
男が今まで買い集めた
たくさんの詩集と
もちろん自分の詩集も置いて
お客さんにはコーヒーをのみながら
何冊でも何時間でも
ゆっくりと詩を読んでもらおう。
そう決めた。
男は現代詩カフェの店主となり
毎日こだわりのコーヒーを淹れ
お客さんを待った。
現代詩カフェは駅から遠く
看板もなく住宅街の中に
ひっそりとオープンしたが
口コミで少しづつお客さんが入り
詩が好きな人たちの間では
少しだけ話題になりはじめていた。
しかし、現代詩カフェは
経営が軌道に乗ることはなく
わずか一年で閉店した。
カフェが潰れた理由は
結局のところ、
詩が好きな人間が
あまりいなかったからではなく
店主の淹れるコーヒーが
死ぬほど不味かったのである。
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コーヒー・アンソロジー