友だち
2012



「再帰的近代」という石臼がある

それは無数の嘘事を星屑と一緒に挽き砕くことで
「都市」という大規模構造を幻視させる魔臼

その「都市」で、僕は友だちとはぐれてしまった

僕は友だちを追いかけようとすればするほど「都市」の深みにはまり込んで
十分おきに繰り返す地下鉄の「終電」をいつも必ず乗り逃してしまう

僕はようやくの思いで
友だちが身を寄せる喫茶店にたどり着いた

喫茶店の時計はひどく壊れており、カチカチと音だけなっていた
全ての針がぐにゃぐにゃに曲がっていて今が何時なのかさっぱりわからなかった

喫茶店の主人に言わせると、「何時でも今なのさ」ということらしかった
僕はそこで友だちに再会した


「いったいどういうつもりなんだい」

友だちは言った

「はぐれてしまったのは仕方ないとして、君は合流が遅すぎるんだよ。
【友だち】という契約を甘く考えているのではないか」

僕は謝るしかなかった


友だちは言った

「もう、君と行動をともにすることはない。契約は破られた。
 他の誰でもない、君自身にだ」


僕は石臼を思い出した
僕はもう一度挽き砕かれたいと思った

永劫回帰する選択接続
嘘事と星屑が砕かれ合う絶え間なき幻視の再生成


(お互いに)完全に忘れてからの 「はじめまして」
(お互いに)完全に忘れてからの 「はじめまして」


「再帰的近代」が招来する、疲れ切った今日というこの一日を

さあもう一度






自由詩 友だち Copyright 2012 2014-11-10 22:55:19
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