朝の日記
服部 剛
染色体の一本多い、3才の周が
初めて言葉を発した
「それ…」
僕は身を乗り出して、聴き直す
「え、なに?」
目が覚めた――(なんだ、夢か…)
布団からひょっこり顔を出して
周はまだ、寝息を立てている
もう少しで周は
布団からむっくり身を起こし
小さい両手で、のびをする時間だ
(いつになったら喋るのやら…)
ふだんは妻にも、口にしない
その言葉に蓋をして
心の中で言い直す
(彼には彼の、道がある…)
布団からひょっこり出る
ぬいぐるみのような周の寝顔を
じぃ…とみつめる、朝のひと時
待つ――という秘儀を想いつつ
今日の出勤の為にのびをする、僕は
窓越しに
朝のひかりを浴びて
布団から立ち上がる