葉leaf



美しい花は咲き始めるにあたって
他の花々と契約を交わした
それぞれの孤独を干渉し合わない契約を
美は純粋であることから生まれ
自らの美の形成は自らの唯一の中心性に基づく
だがやがて花は気づく
自分もまた他の花々と同じ形をしていることに
自分は所詮伝統の申し子
自らが主体となる美の形成などなかった
花は満開の時期に一斉に契約を変更した
それぞれの連帯を壊さない契約に変更した
花は他の花々と同じであることに不安を抱き
不安は連帯することで反転して安心に変わる
花はいつでも孤独ではなかった
遺伝子に決定され土地柄に決定され
他の花々と会話し合う
他者に侵食されている受難は
他者から贈与されている恩寵にとって代わり
やがて散りゆくころには
花はもはや契約を結ぶことを放棄した
権利や義務を負わなくとも
花々は臨機応変に互いに交易する
豊かな交易の果てに
花は散ってゆき
大地とひとつに溶け合った
大地には孤独も交易もなく
ただすべてを受容するべく不動に開かれていた
花は大地と共にある揺るぎない愛となり
世界の全ての禁止を緩やかにほどいていった


自由詩Copyright 葉leaf 2014-11-06 03:16:46
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