饒舌な耳
そらの珊瑚

美味しそうなものに向かうと
全身全霊、前のめりでピンと張る

いつも一緒かと思いきや
左右別々に、動いてもみせる

音を拾います
そこから
ここまでの
世界を知るための複雑な情報であるから
それはもう大切に

犬の耳を見ていると
そこが音を拾うだけでなく
一生懸命に
心を伝えようとしているのがわかる
言葉を持たないかわりに
とても おしゃべりなのだ

小春日和のひざしのなかでは
つつましく脱力しているから
用もないのに
名前を呼んでみたりする
 
 なんですか? なにか用ですか?
 散歩の時間にはまだ早いですよね?
 あっ困り事でもあるのでしょうか?
 頼み事? あんまり難しいことは無理ですよ
 遊ぶのですか?
 それとも何か、くれるんですか? 

君を試してごめん
めんどくさいなあ
と思っていたとしても
そこはいつだって正直で
私に向かう
君を確かめてごめん

その入口はぼわんぼわんと
びろうどのような毛で覆われていて
無条件で
単純に優しい生き物みたい



自由詩 饒舌な耳 Copyright そらの珊瑚 2014-11-05 09:07:47
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