悲しい動物
やまうちあつし
庭の手入れをしていると
どこからかぶらりと
見慣れない動物がやってきた
とても悲しい目をして
物置や車のあたりをうろついている
保健所に電話するか警察に知らせるか
本来ならばするところだが
あんまり悲しい目をしているので
庭に生えている植物の葉をむしり
口元に差し出す
この植物はうちの家内が
どこからか仕入れて庭に植えたもので
忘却作用があるという
悲しい目をした動物は
ゆっくり顎を動かして
ひとしきり反芻していたが
やがてくるりと向きを変え
我が家の庭から立ち去った
ちらとしか見えなかったがその時も
悲しい目をしていたような気がした
私は庭の手入れを続ける
そしてふと思いつき
先ほど与えた植物の葉を
そっと口に含む