地には平和を
大島武士

感情を持った人々が
僕のそばを通り過ぎる
川の流れのように 車の流れのように
傷つかないように気を配りあって
気がついた時には人の海の中
グチを言いながら世界を味わう

すべての飢えた子どもたちを思って
ロケットになって 無責任に月まで飛びたい
だけれどやっぱり時間をかけて
みんなで空へと届く
エスカレーターを作りたいけれど
僕は宇宙を一人占めしたいから
そんなことは誰かに任せて
争い溢れる地上にとどまった

バスに乗って 電車に乗って
行きたいところまで一人で行くよ
ノートに言葉を書きとめながら

僕は男で
スローターハウスで働いている訳ではないから
月に一度も血を見ないよ

だけれど大人になっても筆記体を
上手に書く事の出来ない僕は
いつも乱暴に言葉を書き殴り
きれいなノートをくしゃくしゃにして

電車を降りて 改札くぐって
最後は歩いて 人に会いにゆく
感情を 分かち合いたい
人のもとへ

憎しみは愛によってしか
終わらないなんて事に気がついても
僕は 愛しい世界をホウキではたいて
痛みに飢えた気分になったら
反対側の頬をさしだすよ

いつでも血の匂いに飢えているけれど
争いが溢れるこの地上が
すべて愛だと感じたいから
自分の優しさをののしりながら
平和に暮らしたい

おだやかにおだやかに
柔らかい言葉で傷つけあっても
すこやかにすこやかに
分かち合った痛みをいとしんで
世界の優しさに眩暈を覚えて
反対側に突き抜けろ


自由詩 地には平和を Copyright 大島武士 2014-11-01 13:42:50
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