引け目
深水遊脚

 5回に2回しか考えていることを言葉に出さない そういう私の上澄みを皆が好いてくれていた 淡白であとを濁さない演技で 私なりに道を極めていた 対話を悲しみでもみ消す以外の表現をまだ知らなかった 時には隠した5分の3がいつも行く場所を求めて あてもなく散歩していた それくらいには自由だった

 放っておかれることが快いこともある 知らずとも想像くらいはできるだろうと 甘く見積もることをやめたのは随分まえのこと まず5分の3が要求され 断る理由がないので見せると すかさず5分の4が要求される それが当然でそうするのが優しさだと決め込んで疑わない 残りの5分の1は要求されることはない 5分の4が全てだと正解を決めてしまうのだ 彼らから見ればそれは4分の4なのだから無理はない うろたえた私が5分の1を示すとそれは誤りとされてしまう

 引け目はディフェンス すべてを奪い取り 奪えないものはなかったことにしようと辻褄を合わせる無意識なオフェンスと 傍目には気づかれないくらいの力でわたりあう だいたいは知り尽くした退屈なゲームをこなすだけ 目を瞑ってでもできるくらいには熟練している だから戦友は募集していない いちから教えるのはしんどいうえに マニュアル化しなければ誰も動かないのだ 気持ちはわからないでもないけれど

 当てのない散歩に行く それなりにある様々な義務を放り出して 時々それは切迫した尿意のように必要になる そして用を足すときと同じように あまり覗かれたくはないもの ああ すぐに戻るからあまり心配はいらない いなくなったりはしない たぶん


自由詩 引け目 Copyright 深水遊脚 2014-10-31 23:23:08
notebook Home 戻る