パンツ来歴ーぼくらは人間1ー
イナエ

今日は可燃ゴミ収集日
ゆるゆるゴムのパンツを捨てる

魚肉の切れっ端や野菜葛の異臭にまみれたパンツ
カラス除けのネットを剥がし
顔色も変えずに集めてくれる若いあなたがいる

履き替える新しいパンツ

クレアランスの下着売り場には
滴る汗を下着に吸い取らせ
絵顔で売っているあなたがいる

寝静まった郊外の道路を
スーパーに向かってパンツを運ぶトラック
妻や子を家に残し夜を徹して運転するあなたがいる

遠い国では縫製マシンの音に埋もれて
ひたすら下着を作るあなたがいる
ぼくが履くとも知らないで

機械化された綿花の収穫
だが アフリカにはコットン・ピッカーに
負けないよう綿花を摘むあなたがいる

二十一世紀の地球では幾つもの国境を越え
幾人ものあなたの手が
ぼくに気持ちよくパンツをはかせる

電柱の上からぼくを見下ろし
アホーアホーと嗤っているカラスよ
お前の履くパンツを作るカラスはいるか


自由詩 パンツ来歴ーぼくらは人間1ー Copyright イナエ 2014-10-31 11:43:23
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