そらのひと
小夜

何もないはずの場所に
たしかに現れて
わたしと宇宙とをつないでくれる

空がある

閉じ込められていた呼吸を
どこまでも深くひらいて
ちいさな挨拶を
あるいは願いを
かけるように

声をだす

何もないはずの空から
呼ぶ声がする
いつも
さらされているわたしたち

それはつまり
見守られているということ
存在すら知る術のない
とおくかなたのなにかに

そんな空のように
あなたがある

空のひと

あなたを見る
とおく宇宙の果てから
うごめくだれかを見守るように

そしてそのだれかはいつも
わたしでもある

そんな空のように
あなたを
見ている

雨ならば雫を受けるように
雪ならば真白な道へと転げるように
晴れ渡ればただすがしさをもらうように

夕暮れには町並みがひどくいとおしく
夜が降りれば月に寄りかかり
明け方にはすべてがあるべき場所へとおさまって
ただ
生きていくのだと
笑い飛ばすように

いつか
見えなくなるその日まで
見ていたい

そんな空のように
あなたがある

365日
あなたを透かして
わたしを見ている
そうして
ちいさく挨拶をするように
かすかな願いをかけるように
呼びかける

いま
呼吸が
かよった

何もないはずの場所に
宇宙が現れる

あなたを透かして
それを見ている


自由詩 そらのひと Copyright 小夜 2014-10-29 18:03:36
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