防波
葉leaf




感情は伸び縮みしながらも
軸の周りに等しく釣り合って流れている
この感情の水流に濁った電気が通されると
軸自体が正しい位置からずれてしまい
空いた隙間からストレスが分泌されてゆく
ストレスは社会と人間とをつなぐ静脈のようなもの
社会と人間とをつなぐ動脈の必然的な廃棄物
ストレスは固体でも液体でも気体でもない
だから形もなければ低みにも落ちず飛び散らず
言うなれば物質とは違ったのたうつ死のようなもの
果てるようにうごめきながら移ろいゆく瞬間のようなもの
ストレスは人間の生命を静かに傾ける
だが生命が傾きすぎないように支えるもう一つの生命があり
それは悪意と憎しみと軽蔑によって織り上げられたきらめく鉱物
あるいは爪を研ぎ舌を出し目を光らせる狡猾な動物
人間の生命が傾き窪みを見せたところに
傲然と湧き立ち意欲を燃やし続けるもう一つの生命
人間は社会的抑圧により消沈したふりを見せながら
敗北し絶望しストレスの酸に焼かれるふりをしながら
それを斜めに切り裂くようにもう一つの生命を重ね合わせ
野太く社会を嘲笑いストレスよりも一層強い酸で社会の裏側を焼く
人間は敗北において真に勝利し
死んでいく虹を巨大な蛇に変え
社会という無機物を有機的な憎悪でどこまでも食いちぎってゆく


自由詩 防波 Copyright 葉leaf 2014-10-26 04:53:47
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