遭遇
きりえしふみ

 僕の言葉からか それとも心からか干上がって
 或いは深い地底に沈み込んで
 もう二度とはほんとに笑ったりおどけたり心から手を伸ばしたりする自分には
 僕の時間が追いつかないとすっかり放念していた
 かつて僕の背にも翼はあったのに

 ”とても上手”には羽ばたけなくて
 転けたり 這いつくばってみたりした その痕跡を
 まだ生傷なのだと思い込んで塞ぎ込んだり
 その場でじだばたするだけで
 歩いて行かなかったり

 (それだけじゃ視界は開けてこないのに)

 愚かさに気が付いて
 立ち上がって 歩いてみたら
 そこに また 言葉があった

 僕が嘗て幼くて文字通りピチピチしていた頃に書いた一言と
 同じ一言が
 滑稽なほど愉快な書体で無邪気に僕を見上げてた
 どこかで外泊中であったらしい心の片割れとともに

 僕は笑った ほんとに
 僕は歩いた ほんとうに
 たくさん歩いたのに
 そう ”だから”か たまに躓く
 僕は 扉をピシャッ!と閉めたりもする
 それが心だと
 言葉だと
 (そしてそれは縫い合わされた一人称の一部だと)
 もう身に染みている

 まだ 片道までも進めてもいないよう
 凸凹の小花咲く道すがら

 ”そして” あなたと目が合った……

 (C)kirye shifumi 2014/10/26


自由詩 遭遇 Copyright きりえしふみ 2014-10-26 03:53:16
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