ホムンクルス
和田カマリ

僕はどうしたと言うのだろう
誰もが帰宅した夜の事務所
好きなOLさんのいすに座り
彼女のカーディガンを匂いながら果てた

その後始末のティッシュの処理を
思い出せないでいる
ちゃんとトイレで流したのか?
まったく覚えていない

それどころか会社中の照明も消され
事務所に閉じ込められた僕は
この部屋でもうじっとしているしかなかった
部屋の中は栗の花のにおいで満たされていた
やっぱりどこかに置き忘れているんだ

高身長で貧乳の彼女を思いながら
一気に昇りつめたまでは良かったが
精液や陰毛をたっぷり含んだ
肝心のティッシュの処理を怠ってしまったのか
それとも無意識に行なったのだろうか
自分は認知症の傾向があるのだろうか

拷問のように長い夜
僕はじっと
そのOLさんのいすの上で過ごしていた


やがて寝てしまったのだろう
意識を失っていた僕
ただならぬ気配に目を覚ますと
彼女を含む数人のOLさんに囲まれていた
朝の当番で早出をしてきたのだろう

「きゃー、何これ汚いティッシュ。」
「誰の嫌がらせなのかしら。」
「証拠、証拠」

OLさん達にに写メを取られた後
僕はビニール手袋をした大好きな彼女に
トイレまで連れて行かれて
そこであっけなく流されてしまった
あまりにも短い人生だった
飛び出して半日も経っていない

ああなんだ
そういうことだったのか


自由詩 ホムンクルス Copyright 和田カマリ 2014-10-25 11:41:01
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