百鬼繚乱 < 3 >
nonya


ITTANMOMEN (一反木綿)


薄っぺらな奴だと蔑まれても
捉えどころがないと疎まれても
何処吹く風を自在に乗りこなして
へらへらと今をすり抜けてやる

旗のように風をくらって
縄のように力をあざなって
服のように人をかざって
雲のように刻々と姿を変えたいから

たとえしがらみに引っ掛って
空を仰ぎながら途方に暮れても
たとえ世間体に挟まって
雨に打たれるまま薄汚れても

簡単に破れたりするもんか

ぺらぺらの性根に
しっかり織り込まれているのは
100%コットンの心意気





FURARIBI (ふらり火)


眠れない夜に
私の身体を抜け出した
嫉妬は

鳥の形をした
炎になって街をさまよった
あげく

見慣れたドアの
見慣れた部屋の
見慣れた男の隣の
見知らぬ女の心を
掠めて

夜明け前に
ふらりと私の身体に
戻ってくる





YAMABIKO (山彦)


何から何まで返してあげる
秒速340mで返してあげる

温かい音は温かいままに
冷たい音は冷たいままに

君のリアルを返してあげる
お世辞抜きで返してあげる

誤字も脱字も全部ひっくるめて
痛みも苦味も容赦しないで

君から出たどんな音色も
すべて君の一部であり全部だから

たとえ美辞麗句であっても
置きっぱなしは許さない

怖くても汚くても逃げたりせずに
ちゃんと持ち帰って欲しいな





NEKOMATA (猫又)


いくつもの夜をまたいで
今日だけを生きてきた
大切なのは目の前のご馳走
欲しいものは今日手に入れる

目覚まし時計は雨より嫌い
約束は子供より苦手
足跡を懐かしんだことはないし
夢なんか見たこともない

やっと見つけた今日の獲物は
見た目はカチカチの紳士
中身はトロトロの幼児
まるで半熟玉子みたいな貴方

我儘とか気紛れとか
自分の中の大雑把な物差しを
振り回さないと気が済まない
よくあるタイプの貴方の

甘ったるい常套句の羅列に
とろけたふりをしながら
取るに足らないプライドに
素敵な爪痕を残してあげる

ほんの少し揺らしただけで
貴方は零れてしまうけれど
いくつ夜をまたいでも
私が満たされることはない







自由詩 百鬼繚乱 < 3 > Copyright nonya 2014-10-23 19:13:16
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