月の夜
ヒヤシンス


 群青色の空高く 浮かんだ月は艶かしくて
 女体の中心を穿つ臍のようだ。
 月に向かって両手を重ね
 ゆっくり優しく愛撫する。

 時間をかけて湿った月の柔肌を
 私はもう愛さない。
 一線を越えられない虚しさを
 私はすでに知りすぎている。

 怖れを道化で誤魔化すことに
 いつから慣れてしまったのか。
 月がげらげら笑っている。

 涙の泉はとうに枯れ 海底深く沈んでいる。
 決して届かない行為への軽蔑。
 波間に揺れる月もにやにや笑っている。


自由詩 月の夜 Copyright ヒヤシンス 2014-10-20 22:56:35
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