きみのすべてよ応答せよ
木屋 亞万
走るスニーカーの音、砂利がこすれる、膨張収縮膨張収縮くりかえす肺、夜の街
走り抜ける車道、電灯を避ける影、目がくらむハイビーム
からから充血する目から、ずんとひりつく鼻の奥から、発信されるメッセージ
胸が締め上げられる、心臓がはずむ、足がしびれて、頭から噴き出た汗が、額に垂れて、目に染みる
このまま走る、きみは今だれといる、このからだは、きみのそばにいることを、ゆるされていない
かんがえても、かんがえても、ねがいはとどかない
つかれて、つかれはてて、なにもかんがえず、ねむれるようになるまで
きみのことをかんがえないように、はしる、走る、きみのすべてをわすれるために
きみの目も、わらった顔も、くびもさこつもうなじもてくびもゆびも、
ねえねえとよぶ声も、とんとんと呼ばれたときの肩の感触も、腕と腕が触れていたことも
きみとのすべてをわすれるために
信号が赤になっても止まってはいけない、立ち止まったら考えてしまう
きみの話し方を、語尾の癖を、笑い方を、照れた目を
きみはいま何を考えているかなんて、考えてはいけない
頭に流れるこのことばをきみにつたえたら、どうなるかなんて考えてはいけない
きみのすべてに、からだの核が呼びかける、こころはそれをゆるさない
応答せよ、応答せよ、たすけて、だれか、さみしい、きみは?
はしる、走る、つかれて眠るそのときまで、歩けなくなるまで走る
走り続けて死ねたらきみは
かけつけてくれるかな
かんがえてはいけない
かんがえない
応答せよ
おう桃
嘔吐
おうt
ぉぅ
ぉ
ぅ