独りきりを思い出す
凍月



思い出した
思い出してしまった


宵の寒空
その底に沈む空気を吸って

木枯らし

髪は乱れ
呼吸は出来ない
内臓を風が通り抜ける感覚
僅かに揺れる身体

静けさの底に落ちていく感覚

映画のフィルムの線路の上を
時間の列車が走り抜ける

皮膚を通過する冷えの中
隠され押し込められてきた
孤独を急に思い出す


群集の喧騒の中にいても
教室のどこにいたとしても
友人の輪の中にいても
一人、夜道を行く時でも

何一つ変わらない

埋まる事の無い黒い空白は
見ていない振りをするしかない


映画のフィルムの線路の上を
記憶の列車が走り抜ける
思い出せ
本当にお前が
孤独でなかった時が
少しでもあったか?


一度孤独を意識した時
その時から
違和感は常に纏わりつく
気付けば独りになっている



宵の寒さを吸って吐く
心の穴を風が吹き抜けた






自由詩 独りきりを思い出す Copyright 凍月 2014-10-16 21:59:26
notebook Home 戻る