その時まで
こしごえ

一つの窓から零れおちる音楽の
さまざまな音色は呼吸している

一輪の花の散り際に
老人は一冊の本を読み終えた

青空色に青ざめたほほを
ほほえむ気配の黄色の蝶々はひらめく
風の言葉を聴いて
ゆびさきのさした白い雲は旅に出る
ゆらぐこころを

音色の物語と会話をする日に透けた葉の群れ
だれもいない魂のあいさつ
青い惑星
私は
今日も有り難く
そよ風に染まりつつささやく
ありがとうございます、と

静める私の
深い闇に浮かび上がる
顔は無表情に
いつかの夜の

古い手紙を読みかえす
あの時の気持ちがひびいて来る
失われた
光といっしょに
一生背負ってゆくのであります
一つの窓の
一輪の花の
青空色の
静けさと共に

青い惑星がまわる
いつまでも
いつまでか
その時まで
名も無い草は光とおどる






自由詩 その時まで Copyright こしごえ 2014-10-15 22:42:33
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