オイルと
竜門勇気


爪を切るときに
深爪しないようにするのと一緒で
なにか喋るときには
何も考えないようにする
世界の果てで
自分が待ってるんだ
名も無い鳥にも
名前はあるんだよ
自分で名乗ったりはしないけど
そういうことに本当は
名前なんかつけちゃいけないんだ

十五年前の僕は
本当に腹を立てていた
世界のすべてが気に食わなかった
怒りは僕の眉を吊り上げて
焼け付いて焦げ付くまで爆発し続けた
甘い陶酔の燃料で
それを燃やすことは
人を拒絶することだ

結局、人を拒絶しきることは出来なかった
拒絶しているのは自分の中の他人であって
自分の箱庭で自家中毒を起こしていることに気づいたからだ
夜は思索に費やす
行ったり来たりして
行ったまま帰ってこなかったり
送り出したより多く帰ってきたりで忙しい

そんな時は世界の果ての扉を叩く
その時全ては世界の果てから眺める景色に変わるから

果てから見れば
この世界は夜ばかり
頭から無数の枝が伸びて
朝には枯れてしまう
その繰り返しがなくなる場所に
時々

そんな時があるから世界の果てがある
進むだけじゃ止まってしまうし
止まってないと進めないし
どこを向いても後ろはある
その時全てが最果てからの景色に変わる

乾いた爆発
老いるときっと
老いるときっと
その時きっと
その時全ては世界の果てから眺める景色に似てる


自由詩 オイルと Copyright 竜門勇気 2014-10-14 23:13:15
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