ネズミ
為平 澪
上京して赤信号で渡ったら 叱られた
コンビニにまで 「並びなさい」の、
足型マークが付けてある
お金を払わなければ 何処にも行けない街が
嫌いになるまで 居たかったのは
この街で 私を映す目をした「わたし」に
探されたかったから
銀座線の乗り方も知らないままで
赤坂が大阪と どう違うのかも知らないままで
南青山に 何があるのかも知らないままで
いつもと同じ時間 いつもと同じように
くたびれて帰るアパート、の
窓際から「欲」と「好奇心」がぶらさがったまま
私を 見下ろしていた
今日 居酒屋に入っていって
独り ウーロン茶で酔ったふりをする
(私、詩人なんです!シンジンショウ、とちゃったりして 凄いでしょう!
なんて 絶対、言わないよ
凄くないから
それって、ちっとも凄くない
今日面接に行ったら それとない圧力をかけられたんだ
(まず 頭を下げることから覚えるんだね
(これだから ユニクロを着た田舎娘は気に食わないんだ
都会の顔をしたお代官様は やんわり罠を仕掛けて突き帰す
アパートに帰ると
最近 ビニールを齧り続ける小動物の音がする
多分 ネズミが いるのだろう
姿は見えないけれど ちょこまか動く
汚いネズミが 街に穴を 空けていく